アイデア発掘手法 特許など新規性アイデアの芋掘り

僕は今年から、特許アイデアの担当もやっている。

本業のPMとは別の間接業務である。

その中で、特許レベルの新規性のあるアイデアを考え出す何かコツみたいなものを、僕がなんとなくつかんだので、ノウハウとしてまとめて記事にしようと思う。

特許に限らなくても、何か斬新なアイデアや、従来と違う新規性のあるアイデアや、面白いアイデアを考え出したい時の参考になると思う。

特許アイデアとは

特許は従来と違う何らかの工夫や方法で、従来の技術では解決でなかった課題を解決するアイデアである。

求められるものは、新規性と工夫と課題解決だ。

新規性とは、同じ方法をまだ世の中の誰も考えていないことが条件となる。

同じ方法が、既に実用化されていたり、特許として登録されていたら、その時点で出願不可となる。特許の権利が切れていても、同じアイデアが特許登録されたことがあれば、新規性がないと判断される。

特許は、課題を解決するための、工夫や方法がアイデアとなる。

そのアイデアが、既存にはないことが必要条件となる。

特許アイデア検討の流れ

まず、ノウハウの前に、実際に僕が行った作業を簡単に説明する。

上期、下期の2回、それぞれ2週間程度の期間を決めて行った。

上期

1.アイデア検討  期間:1週間

 結果、アイデア候補の元ネタを10個程度、発案。

2.アイデア既存調査 期間:5日間

 元ネタの既存調査。つまり他の人が同じことを発表していないか調査を行う。

 調査方法は、googleと特許庁のDBをネットで検索する。

 元ネタと関連のあるキーワードで検索して、上位100件くらいに目を通す。

 全部は見切れないけど、近いものほど、検索上位になる傾向がある。だいたい上位100件くらい目を通せば、新規性の面で行けそうか否か見込みがつく。同じアイデアが検索されれば、その時点でその元ネタは没となる。

 ここが最初の関門で、

 せっかく良いアイデアを考えても、他に同じことを既に考えた人がいるケースは多い。

 結果、既存にない元ネタ2件。

  10個程度の元ネタを考えても、残るのはこの程度である。

3.アイデア素案資料作成 期間:1日

 特許管理専門の部署(以下、T部とする)との打ち合わせに向けて、残った2件のアイデアの説明資料を作成する。

 この資料は簡易なもので概要みたいなものだ。

 T部の人に説明して、OKがもらえたら、発明考案書(匿名性のため、正式名称ではないが同義)という説明資料を作成する。T部の人が可能性を認めたものだけが、発明考案書の作業へ進む。T部の人が特許出願は無理と判断したら、発明考案書には進まず没となる。

4.T部との会議

 考えたアイデアを説明し、特許になりそうなアイデアか判断してもらう。

 ポイントは、特許に値する新規性を持っているかと、既存アイデアがないことである。T部は、特許を沢山見てきているから、自分の事前調査では既存になくても、T部の人が既存と同じと判断したり、既存にありそうと見当をつけることもある。

 ここが次の関門。

 結果、2件ともOK。

5.発明考案書作成2件  期間:4日間

 自分の発明をフォーマットに従い記載する。

 アイデアのポイントや、従来技術と違う点や、工夫した点や、その効果としてどのように課題解決されるか等を構成図なども入れながら作成する。

 結果、 発明考案書2件をT部に提出。

6.ここから先

 ここから先は、T部の仕事となる。特許として出願するか否かを審査する。

 特許は出願して保有するには、維持費のようなコストがかかる。

 企業の特許として最終的に出願されるか否かは、維持費を払っても企業が儲かるか儲からないかで決まる。アイデアとしては斬新で面白くても、売れそうにないものだったら、出願されない。

下期

上期と同様の作業を行った。内容は同様なので結果だけ記載する。

アイデア素案を4件考案し、T部との会議。

 4件の結果は、

 ・発明考案書作成 1件

 ・T部が既存調査 2件  

  ※工夫や課題解決は問題ないが、同じことを考える人がいそうなアイデアなので、既存を調査し、その後、OK/NGを判断。既存にあれば、その時点で没。OKなら発明考案書に進む。

 ・没 1件 

  ※良いアイデアだが、特許ほどの新規性が足りないと判断された。

ノウハウの適用と検証

ノウハウは上期作業中にコツをつかみ、下期作業でノウハウを適用し実験した。検証済である。

発明考案書3件以上が、2021年度(アイデア検討期間は計1カ月程度)に、僕が1人で考えたアイデアの実績である。

アイデアは、全社で募集がかかるが、発明考案書を在籍中に1件も提出できない人のほうが多い。そこそこのハードルはある。

アイデア発掘手法

ここから、ノウハウの具体的な説明を行う。

ノウハウは3つあるが重要な順に記載する。僕は時系列などの制約がなければ、概ね重要な順に記載する。3つ目は、特性みたいなものなので、実行するのは最初の2つである。

1.要素を組み合わせる

新規性のあるアイデアは、要素の組み合わせが新規なのである。まず、これを理解することがポイントである。

よくある誤った理解は、無から有を生み出すような考え方だ。この方向性でいくと、たぶん、新規性のあるアイデアは出てこない。経験上も理論上もそう思う。

イメージするために、例を挙げて説明する。

例1 化学式

正解:2H2+O2 → 2H2O

誤解:Zero  → 2H2O

上記例でいうと、水(H2O)が新規性のあるアイデアに相当する。

既存の世界では、水素(H2)と酸素(O2)しかなかった。 水(H2O) は存在していない。

水素(H2)と酸素(O2) を組み合わせると、くっつけると、水(H2O)という新規の物質が誕生した。

真空(Zero) からは水(H2O)という新規の物質は誕生しない。

例2 タンパク質と脂質

タンパク質と脂質は異なる物質だが、

タンパク質炭素、水素、酸素、窒素、リン、硫黄から構成される。

脂肪酸炭素、水素、酸素から構成される。

タンパク質と脂肪酸は、性質もだいぶ異なっているが、要素に分解すると似たようなものである。要素の組み合わせや、くっつき方が異なるため、違う物質となる。

例にあるように、組合せやくっつけ方を、色んなパターンで試してみて、既存と違うくっつけ方が見つかった時、それが新規性のあるアイデアとなる。

頭の作業としては、自分の頭の中の各データを、色んなものとくっつけて、上手くくっつくものを探していく。試行錯誤する。

くっつけるものは、近くにあるものをくっつけるより、遠くにあるものや違う分野のほうが斬新なアイデアとなる。誰もそれらをくっつけようとは思わないからだ。

近くにあるものは、誰でも気づくから、既存で誰かが気づいている。

特許でいうと、既存ありとなり、新規性なしとなる。

だから、できれば 遠くにあるものや違う分野のものをくっつけようと意識して作業したほうがよい。

僕が他の記事で書いた『自然と球技と物理学と仏教の教えと』は、ちょうど下期の特許アイデア検討中に、色んなものを頭の中でくっつけていたら、変なものがくっついたので、ついでに記事にしたものだ。

この変なものというのも、ポイントだ。変なものほうが、斬新で新規性のあるアイデアになりやすい。

僕が上期に提出した発明は、特許の内容は企業秘密で伏せるが、頭の工程としては、

消防と水道と傘をくっつけて誕生した。

ここで最もポイントとなったのは、傘だ。

消防と水道は最初にくっつけていて、これだけでもそれなりのアイデアではあったが、特許というほどの新規性や斬新さが足りてなかった。そこで僕はもう一要素何かをくっつけようと、ずっと考えていた。

傘が壊れたことをきっかけに、傘がくっつくことに気が付いた。

傘全部でなく、傘のある性質に着目してそれをくっつけた。

そうしたら、かなり斬新で新規性のある面白いアイデアとなった。

既存を調査しても、近いアイデアすらなかった。完全に新規である。

誰も傘をくっつけようとは思わないから、斬新なアイデアとなる。このように、遠いところにあるものをくっつけたほうが、斬新で面白いアイデアが誕生する。

2.アイデアの熟成期間

アイデアを生み出すには、熟成期間が必要となる。

ある程度の期間、アイデアを考え続けなければ、アイデアは出てこない。

僕の場合は、上期作業、下期作業とも実績でだいたい1週間だった。

アイデアを考え始めて最初の3日くらいは、何ひとつアイデアは浮かんでこない。

ここで諦めないで、考え続けることが大事だ。

一定期間、考え続けると、ある時期を境に次々とアイデアが出始める。

この期間は、僕の場合は約1週間だったが、人によって違うかもしれない。

数日考えてアイデアが何も浮かばないからといって、検討をやめてしまうのでなく、とりあえず一定期間は考え続けることが大事だ。

期間は人による。もっと長い人、短い人、いくら考えてもアイデアが出ない人など、色んな人がいると思う。

ただし、アイデアの検討には、このような熟成期間が必要なことは考慮したほうがよい。

アイデアが出始めると、1つ2つでなく、沢山アイデアが出始める。そこまで続けること、熟成させることが重要である。

アイデアは、突如、やってくる。いつ何をしている時にやってくるかは分からない。

僕の場合は、朝起きて布団でうだうだしている時や、散歩している時や、別のことを考えている時などに、突如、無意識みないたところから、アイデアがやってくる。

なんとなくだが、無意識が熟成期間中に意識下で調査を行い、調査結果が出たら意識のほうへ「いつも考えているやつの調査結果がでたよ」とアイデアを送ってきているような気がする。

脳科学者でないから学術的なことは分からないが、感覚的にはそんな感じである。

3.アイデアは芋みたい。

アイデアは芋のようなものである。

よく芋づるというが、1つのアイデア(芋)を掘り出すと、複数の別のアイデア(芋)も一緒に出てくる。

小さい芋もあれば、くっついていた芋のほうが大きい場合もある。

1つのアイデアを検討していくと、その過程で別のアイデアを発見したり、少し横道にそれた時に別のアイデアを思いついたり、検討したアイデアを少し応用するとまた別のアイデアとなったり、副産物的に複数のアイデアが掘り起こされる。

僕の場合は1つのアイデアを考えると、副産物的に2~3個ぐらい、考える予定でなかった別のアイデアが生まれた。

上期、下期の経験からは1つのアイデアを考えて、1つのアイデアが生まれることのほうが少ないと思う。アイデアは0件か複数の場合が多い。

1つアイデア(芋)を掘り起こすと、複数のアイデア(芋)が、芋づるとなって掘り起こされる。

アイデアには、そんな特性がある。

補足

僕は創造性を発揮するには、子供みたいになればよいと思っている。

哲学者のニーチェも同じことを言っている。

だから、子供と遊びについて記載した記事『遊びのススメ』と、創造性が求められる特許の話を続けて記載した。

以上。