経済的満足度の最適化について考察すると、日本の伝統文化のハレとケに行き着く。経済的満足度を簡易な計算式で表現し、ハレとケとの関係性について考察した。ハレは晴着のハレで、特別で贅沢な例外的な時間を意味する。一方、ケは普段の日常的な時間を意味する。日本文化はハレとケによって、生活にメリハリをつけて、限られた資金源の中で最大の満足を得る方法を産み出したのでないかと推察する。
1.経済的満足度を表す計算式
経済的満足度の簡易計算式を以下に示す。
計算式1:経済的満足度(S)=経済的価値(V)-生活レベル基準値(L)
カッコ内は、説明用の変数である。それ以上の意味はない。
例で説明する。
例えば、旅行で1泊5万円の五つ星ホテルに泊まったと仮定する。
普段の生活レベルが、家賃月6万5千円のアパートに住む人と、家賃月100万円の豪邸に住む人では、五つ星ホテルに泊まった際の経済的満足度は異なる。
家賃6万5千円の人の普段の生活レベルは、部屋の大きさが6~7畳、ユニットバス付で、シングルベットがあるくらいの部屋に住んでいると思う。五つ星ホテルに泊まれば、普段と違い、2部屋くらいの大きさの部屋で過ごし、足が十分延ばせる大きなバスルームで入浴し、良眠設計のキングベットで眠り、いつもよりも数段上の生活レベルを一時的に経験できる。
この普段の生活レベルとの差に、経済的満足を感じる。
一方で、家賃100万円の人が、同じ部屋に泊まったらどう感じるだろうか。 家賃100万円の人 は、普段の生活で、スイートルームのような部屋で生活している。
この五つ星ホテルの1泊5万円の部屋に泊まっても、普段より生活レベルが低いので経済的満足は感じない。 家賃100万円の人が、 経済的満足を感じるためには、この五つ星ホテルでもVIP用の1泊50万円くらいのスウィートルームに泊まる必要がある。
つまり、生活レベルの基準値が上がると、経済的価値もより高いものでないと、経済的満足度を感じなくなってしまう。
2.生活レベルの向上について
従って、生活レベルの基準値を上げる際は、必要性をよく検討したほうがよい。
一度、上げた生活レベルは、下げるのが難しい。上げる容易さに比べ、下げるほうは難しい。例えば、子供が生まれて家族が増え、今よりスペースの大きい家に住む必要がある場合など、必要な場合は上げればよいと思う。だけど、年収が増えたから、今より家賃が高いところに住むなど、理由もなく生活レベルは上げないほうがよい。今の住居に狭さを感じているなど、理由があるならよいと思う。
なぜなら、生活レベルの基準を上げるということは、計算式1が示す通り、経済的満足度を感じる時のハードルも上がることでもある。
メリットとデミリットをよく検討してから、判断をしたほうがよい。
僕は、収入が上がり、お金で人生を豊かにするには、日本伝統文化のハレとケの考え方を参考に、ハレの日に使う経済的価値(V)のほうを上げて、ケのほうは生活レベル基準値(L)を安易に変えないほうが良いと思っている。
それは、経済的満足度の面と、対費用効果の面でも、高収入への執着(もっと給与がほしい的執着)防止の面でもよいと考える。
生活レベルの基準が上がると、もっと収入がないと、満足できない方向になりがちだ。そこそこの生活基準レベルで満足できれば、健康を犠牲にしてまで働いて収入を上げる必要もなくなる。モットモットが、日本のサラリーマンがワーカホリックになっている要因の1つでもあると考えている。 ワーカホリックの要因は、他にもある。
余剰金は、ハレの日に、好きなことに、景気よく、お金(V)を使えばよいと思う。
《参考(ハレとケ)》
日本の伝統文化では、ハレの日とケの日を使い分けている。詳細はgoogleすれば、参考情報がある。
ハレ:晴着などで使う意味の晴れ。天気の晴れでない。特別な日。贅沢をする日。
ケ:普段の普通の日常生活。
3.経済的満足度の対費用効果
次に、ハレとケの関係を前提にして、経済的満足度の対費用効果を考えてみる。次の計算式を用いる。
収入が上がり、ハレの日の費用を元のV0からV1に、ケの日の費用を元のL0からL1に上げたとすると、追加コストの計算式は以下となる。NとMは回数を示す。
計算式2:追加コスト(C)=N×ハレの追加費用(V1-V0)+M×ケの追加費用(L1-L0)
ハレとケの性質から、計算式3が導かれる。
計算式3:M=α×N。α>>1である。
簡単に言うと、週に1日、贅沢な日があれば、α=7である。
僕は毎日酒を飲む。毎日、ハレ(酒)の時間帯がある。会社で仕事中はハレていない。1日の活動時間を16時間として、ハレの時間帯を2時間とすると、α=8である。
考えやすいように、1週間単位や1月単位で、自分のハレ時間を集計すると、活動時間との比から、おおよそのαの値が算出できる。各自の生活により値は異なるが、感覚的に考えても、αは3~7くらいと思う。
α=1となることはない。α=1となったらハレはケとなり、ハレではなくなる。 α=1 はハレが特別であることを否定している。その矛盾により、α>1であることが保証される。
計算式2と計算式3から分かることは、対費用効果の面でも、ハレの日に追加費用(V)を多く使い、ケの日の生活レベル(L)はあまり変えないほうが、追加コストも安く済むことを示している。
また、計算式1からも、そうしたほうが、VとLの差分も大きくなり、経済的満足度(S)もより大きくなるということが分かる。
すなわち、日本伝統文化のハレとケの考え方を参考に、ハレの日に使う経済的価値(V)のほうを上げて、ケのほうは生活レベル基準値(L)を安易に変えないほうが、経済的満足度の面と、対費用効果の面で、お得であることを計算式が示している。
結論
計算式から、経済的満足度におけるオススメな生活方針は、日本の伝統文化のハレとケの考え方に行き着くことが導かれた。
参考までに僕はこの考え方に基づいている。年収は新人の時の約2倍程度に上がっているが、20年以上、家賃6万円台の同じ賃貸アパートに住んでいる。独り身なのでこの広さで十分である。住宅の生活レベルを上げる必要性を感じない。一方で旅行などのハレの日には、気前よくお金を使う。出し惜しみはしない。お金より旅行という体験のほうが大事だ。
どう考えるかは、各人の自由でよいと思う。僕の考え方を参考までに紹介した。
以上。