会社を退職 次の道へ

2023年9月30日に会社を自主退職した。25年以上続けたITエンジニアの仕事を辞めて、新たな道(セカンドキャリア)に進むことにした。

50才での退職なので、定年退職と比べると早期退職になると思う。

他の人より早く辞めることや、他の人と違う道を選択することは、少しの勇気と覚悟を要した。決断する過程で、様々な事を考えた。それらについて書き残しておこうと思う。何かの参考になるかもしれない。

1.職業の引き際について

ITエンジニアの仕事も25年以上となり、いつまで続けるのがよいか考えるようになった。

プロ野球選手などのスポーツ選手は、現役を引退するタイミング、引き際を考えると思う。そこには、選手の人生哲学や職業哲学があり、選手としてのピークや衰えから引退を自分で決める。

サラリーマンは、定年退職(60才)があり自身の引き際について特に検討しない人も多いかもしれないが、職業スキルのピークや衰えはあると思う。

僕自身、ITエンジニアとしてのスキルは、40代後半頃がピークで、この先仕事を続けても伸びしろが少なく、加齢とともに衰えていくように思えた。25年以上の間、システム開発のITエンジニアとして関連職種(プログラマー、システム設計、PM等)は一通り経験できた。取りたいIT資格も全て取得し、やり切った感はある。年を取り、体力的にはきつくなってきた。新しい学びも少なく、日々の成長も感じない。そろそろ引き際かなと考えた。

定年退職(60才)や雇用延長(65才)は、年金制度などの社会的都合により設定された年齢であり、各自の人生や職業のタイミングとは関係はない。自分の引き際は、本人にしか分からないし、自分で決めればよいと考えた。

僕は、今(50才)が、ITエンジニア職の引き際として、ちょうどよい時期と考えた。

2.セカンドキャリアの見つけ方

職業の引退を考える時、次の進路も合わせて考えると思う。

ファーストキャリア(新社会人)は、やりたい仕事より、自分にできる仕事、稼げる仕事にしたほうが無難と思う。やりたい仕事で稼げる人はよいが、一握りである。とりあえず無難に、IT関連企業のサラリーマンになった。

セカンドキャリアは、(経済的な問題がクリアできれば)収入は気にせずに、好きなこと、やりたいこと、自己実現できそうなこと、にしようと思った。

それでは好きな仕事は何か、どうやって見つけるか。数年前から考えていたが、結論が出るまで時間はかかった。好きな仕事、やりたい仕事、将来の夢を聞かれても、自分でもよく分からない人が多いのではないか。僕もそうだった。長年考えた末に、セカンドキャリア(次の進路)にたどり着いた。

セカンドキャリアを見つけるために、とりあえず趣味から好きなことを幾つかリストアップしたが、どれもしっくりこない。次にアプローチを変えてみた。子供の頃、何になりたかったか、思い出してみた。幼稚園の卒業のしおりの将来なりたい人に、「星を研究する人」と書かれていた。そうだ研究者だ。中学生の頃までは、学者になりたいと考えていた。高校大学と進むにつれて、進路が現実的となり、学者はファーストキャリアの候補から外れた。新卒で博士課程に進むと、日本ではリスクが大きい。奨学金などの借金が増え、返済の見込も不透明だ。博士号取得や教授等ポストの保証もない。一般企業への就職も年齢的に不利になる。経済的に貧乏になる可能性がある。

他には、子供の頃から、ヘルマン・ヘッセや夏目漱石などの文豪への憧れもあった。本もよく読むから、作家もなりたい職業の1つであったが、新卒で作家志望もリスクが大きい。作家で生計を立てるなど、宝くじを当てるほどに成功率が低い。ギャンブルみたいなものだ。ファーストキャリアの候補にならなかった。

子供の頃、何になりたかったか、考えた結果、学者と作家が浮上した。しっくりきた。好きなこと、やりたいこと、自己実現ができそうなことに合致する。今なら、新卒の頃ではリスクであった経済的問題もクリアできる。ある程度の貯金もできたし、資産運用(投資)の腕も磨いた。独り身だから扶養家族もいないし、貯金が老後準備予定額より少なくなりそうになったら再就職(年収や正社員にこだわらなければ、50代でもあると思う)すればよい。バイトもあるし、何とかなる気がした。

こうして、次の進路(セカンドキャリア)が決まった。

次の進路は、学問研究と執筆活動(ブログや電子書籍等)だ。学問研究は手始めに、10月から放送大学に科目履修生として入学した。しばらくは放送大学で文系から理系まで幅広く勉強しようと思う。将来的には、大学院での学問研究もあるかもしれない。

3.自己実現するための自分だけの道

3.1.自分だけの道

哲学者のニーチェの言葉も参考になった。

《参考文献(ニーチェの言葉)--

世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め。

――ここまで》

この言葉の唯一の道とは、自分の特徴や能力を活かして、自分で切り開いていく道と受け取った。遺伝的にも環境的にも、全く同じ人間はいないはずだから、人それぞれ才能や強みも違う。才能や強みを活かせる道も、人それぞれ違うはずである。自分の特徴をとらえて、自分に与えられた能力や強みを活かせる道に進むという意味に解釈した。そして、セカンドキャリアの検討で進むべき道は決まっている。踏み出す勇気と覚悟を決めるだけだった。

3.2.自己実現の道

マズロー心理学(欲求の五段階説)の自己実現欲求も参考にした。自己実現とは、自分に与えられた才能や能力を発揮して、自分自身になることと考える。ニーチェの唯一の道は、マズローの自己実現への道でもあると思う。

新たに進む道は、自己実現への道でもある。自己実現できる人は少数らしいが、チャレンジしてみる価値はあると思った。

《参考文献(マズローの言葉~マズロー心理学入門(中野明 著)から引用~)--

われわれの責任は先ず第一に、誠実にかつ徹底的に自分自身であることなのだ。

--ここまで>

3.3.環境の変化と成長

人は環境の変化になんとか適用しようとして、成長する側面があると思う。

例えば、小学校を卒業して中学生になると、中学生に適用するために成長する。高校生になると高校生に適用するために成長する。ずっと小学生のまま同じ環境に居続けると、いつか伸びしろがなくなり、成長も頭打ちになる。

学生から社会人になると大きく環境がかわり、自立していかなければならない。新入社員から入社3年目くらいまでは、社会人に適用するために、覚えることも多く、大いに成長すると思う。環境の変化が大きい分、成長する余地(伸びしろ)も大きい。

さて、自分事で考えた場合、IT企業で25年以上、システムの開発の仕事を続けた。子会社から親会社に一度転籍はしたものの、同じ企業グループ内にずっといる。社員は見慣れた人達が多く、仕事はベテランとなり、新たな学びも少なくなってきた。伸びしろがない。やり残したことや、今後やりたいことも特にない。そろそろ、会社を卒業して環境を変化させる時と思った。

4.決断において検討したこと

4.1.軸となる検討項目

経済、時間、経験、成長、健康を軸に考えた。

これらを軸にしたことについて、経済(お金)は生活する上で軸となることは言うまでもない。時間(健康寿命までの残り時間)、経験(人生経験)、成長(自己実現)、健康は、人生で重要と考えるためである。

経済の視点では、今の会社に在職したほうが得策である。勤めていた会社は東証プライム企業で給料は悪くない。在職すれば、確実に貯金が増えていく。

時間の視点では、健康寿命や老化も考慮すると、転身は早いほうがよい。健康寿命は今の男性平均で72才位、その前に大病すればもっと短い。年を取り体力が落ちると、体験可能なものが減っていく。体力が必要な経験(例えば、執筆活動、論文作成、海外旅行、語学留学、新しい分野に挑戦等)は、体力があるうちに早めにしたほうがよい。

経験の視点では、在職を続けても過去の繰り返しが多く、新しい経験が少ない。出会いも、同じ会社のほうが知り合いが多くやりやすい反面、新たな出会いや刺激は少ない。転身すれば、新たな経験と出会いがある。

成長の視点では、在職を続けてもスキルの伸びしろは少なく、ピークは過ぎていてる。転身は新たな可能性と伸びしろがある。成長を続けることで自己実現するためには、自分の特徴や才能を発揮できる分野、本来やりたい分野に転身することが望ましい。

健康の視点では、在職はハードワーク等により健康的でない時もあるかもしれない。会社やPJの状況にも依存する。転身して個人で活動する場合は、良くも悪くも自分次第となる。自己管理をどれだけできるが鍵となるが、やりたいことで生活が充実し、無駄なストレスは減り、労働の時間や負荷も自分でコントロールできるので、自己管理さえ上手くできれば、健康的な生活に出来る。

経済以外の観点では、転身が勝る。経済的な見通しがつけば、転身(退職)で良いと考えた。経済的に問題ないか詳細に検討した。次に記載する。

4.2.経済的な検討

早期退職する場合、老後資金を含めて考える必要がある。

老後資金について、3つの期間に分けて考えた。

期間1:退職後~年金受給開始(65才) 

期間2:年金受給開始から健康寿命(例えば72才) 

期間3:健康寿命後から寿命(例えば82才)

期間1は問題ない。問題は、老後(期間2と期間3)の資金が足りるかという点である。

僕は健康寿命までは体力に合わせて細く長く働けばよいと考えている。働けなくなる期間3に、必要な貯金(年金で不足する分+リスク分)が残っていればよい。以降、期間3で必要な貯金を老後準備貯金と記載する。

期間2では、年金+資産運用(株や投資信託)+バイトなどを生活費にすれば、貯金の減りは少ない。

期間1では、貯金の崩し+資産運用(株や投資信託)+バイトなどで、生活費を賄う。ことのき、貯金の残高が、老後準備貯金より少なくならないように管理する。必要になれば、また再就職すればよい。年収や正社員にこだわらなければ、期間1の年代であれば再就職は可能と思う。貯金は増やすのでなく、キープできればよいので、高収入である必要はない。資産運用+年収で1年分の生活費が稼げればよい。

老後準備貯金は、いくら必要だろうか。生活費と生存期間に依存する。いつまで生きるか、いつ死ぬか、分からない点が、この手の計算をする上で悩ましい点であるが、個人的には健康寿命後は10年程度の期間でよいと思う。

健康寿命を過ぎた後に、20年も30年も生きたいと思うだろうか。健康寿命までは、年金で不足なら働けばよいし、健康寿命後の余生は5年程度でもよいし、長くても10年くらいまでにしたい。

生活費については、期間3は余生と考えて、体力の低下もあり、質素な生活でよい。老後準備貯金は多過ぎず必要分だけにして、体力がある期間1や期間2に生活を充実させるために貯金を使ったほうがよいと考えた。

というわけで、会社を退職することにした。

以上。