苦しいことの考察

苦しいという感情が存在する理由や、苦しみへの対処方法について考察しました。

1.苦しい感覚は何故あるのか

何故、苦しみを感じるのか、身近な所から考えたいと思います。

例えば、おなかが空いたり、寒すぎたりすると苦しいと感じます。その反対に、満腹の状態で更に食べ続けたり、暑すぎたりしても苦しいと感じます。人の生存にとって好ましくない状態の時に、人は苦しいと感じると思います。そして、適度な状態になると、その苦しみは解消されます。苦しいという感情は、生存を適度で良好な状態に保つために存在すると考えることもできます。

苦しいという感情の発生元はどこか考えたいと思います。それは、人の脳内で、脳が必要と判断した時に発生すると思われます。空腹や寒暖など、単純なものは自動反射的に、精神的な悩みなど、もう少し複雑なものは様々な情報を元に総合的に、脳が苦しいという感情の発現について判断していると思います。

このように考えた理由としては、生物進化論的な観点から、DNAやDNAが設計する脳が目的とすることは、生命の維持や環境への適応と考えるからです。その観点からすると苦しいという感情は、生命の維持や環境への適応のために、必要があって存在していると考えます。

2.苦しい状態を解消するために

これまでの考察から、苦しまないで生活するためには、生存にとって適度な良い状態を保てばよいと考えることができます。ウェルビーイング(well-being)という考え方につながるかもしれません。

空腹や寒暖の例にもあるように、環境は常に変化しています。良い状態を保つには、環境の変化に適用する必要があります。静止状態でなく、変化に適用しながらバランスと取る必要があると考えます。

良い状態というのは、どのような状態でしょうか。空腹や寒暖の例からすると、ちょうどよい状態と考えることができます。空腹過ぎず満腹過ぎず、寒過ぎず暑過ぎず、といった状態です。他の例としては、ストレスなどの負荷も強過ぎると病気の原因になりますが、弱過ぎても心身が弱くなり好ましい状態とは言えません。

ちょうどよい状態を抽象的な言葉で表現すると、調和やバランスや中庸といった言葉になるかもしれません。つまり、絶えず変化する環境に適用しながら、調和やバランスを保つことで、苦しい状態を回避できるかもしれません。

ここまで、空腹や寒暖など比較的単純な事例について考察してきましたが、悩みなどの精神的な苦しみは、もう少し複雑と思います。次に精神的な苦しみについて考えてみたいと思います。

3.精神的な苦しみ

精神的な苦しみは大きく分けて、自己原因の苦しみと、非自己原因(外部要因)の苦しみに分けることができると考えます。非自己原因(外部要因)による苦しみは、他者に原因があるものや自然災害など、自分に原因がなくても被ってしまう苦しみです。

自己原因による苦しみと、非自己原因(外部要因)による苦しみは、対処の仕方が異なります。それぞれについて、考察したいと思います。

3.1.非自己原因(外部要因)の苦しみへの対処

3.1.1.苦しみの大きさ

精神的に苦しい事象が発生した時に、どのような過程を経て、脳が苦しいと感じるか考察したいと思います。

まず、苦しみの原因となる事象が発生します。悩みの種といってもよいかもしれません。次に、その事象をどう受け取るか、解釈をすると思います。同じ事象でもポジティブに解釈するか、ネガティブに解釈するかによっても、苦しさは変わってきます。

また、悩みや苦しみに対して自分事としてどれだけ関心を持つか、関心度によっても苦しさは変わってきます。

つまり、精神的に苦しい事象は、解釈や関心度によって変換やフィルタされて、その結果に対して、苦しいという感情が決まると考えます。

例えば、誰かに非難・中傷されて苦しかったとします。身近な人間関係でも、SNSでもよいと思います。この時、誰かに非難・中傷されたという事象に対して、どう解釈するかで苦しさの内容が変わってくると思います。自分に非が特にない場合は、相手の機嫌がたまたま悪かったとか、相手に自分と関係のない不満があり非難により不満を解消しているだけ、というふうに解釈すれば、苦しさは一時的な不愉快で済みます。非難を過大に受け取って、他の人からも非難されると誇大妄想的に解釈すると、苦しみは大きくなります。また関心度によっても変わってくると思います。他人の批評に関心が薄い人は苦しみが少なく、他人からの批評に関心が高い人は苦しみが大きくなると思います。簡単にモデル化した式で表すと、以下のように記載できると考えます。

  精神的な苦しみ=事象×解釈×関心度  ・・・式1

3.1.2.苦しみを軽減するには

3.1.1の式1において、事象は、外部要因の場合、自己でコントロールできない要素になります。一方で、解釈と関心度は自己でコントロールできる要素です。このコントロール可能な2つの要素を工夫することで、精神的な苦しみを減らす方法を考えます。

(1)解釈の引出しを増やす

解釈によって苦しみ方が変わるのであれば、解釈の引出しが多いほうが、よりダメージの少ない解釈を選択可能になります。引出しを多く持つには、様々な物の見方、知識や経験、視野の広さなどが大事かもしれません。経験的にいっても、すごく苦しんでいる状況というのは、視野が狭くなっていることも多いと思います。

(2)関心度を減らす

自分に降りかかった苦難を、他人ごとにように客観視する方法があると思います。主観的に近くで見ると悲劇的なことも、遠くから客観的に見ると大したことないと感じるかもしれません。

また、大自然や地球など広大なものと、悩みや苦しみを比べてみるのもよいかもしれません。相対的に、悩みや苦しみが小さく感じられます。例えば、何かに失敗したとしても、地球は周り、世の中も周り続けます。悩みを大げさに考えないようにできるかもしれません。

アインシュタインの言葉に、有名な「弱い人は復讐する。強い人は許す。賢い人は無視する。」というものがあります。無視できれば、最も関心度が低く、苦しみもほぼなくなるのかもしれません。

3.2.自己原因の苦しみへの対処

非自己原因(外部要因)の苦しみは、苦しみが少ないほうがよいと思いますが、自己原因の苦しみは、単純に苦しみの軽減以上の目的がある気がします。

自己原因の苦しみは、必要な苦しみでもあり、自己の存在を良い状態に向かわせるためのメッセージでもあると考えるからです。空腹や寒暖の例と共通する面があると思います。

例えば、精神的に何か良くない状況にあったり、自分らしい生き方が出来ていなかったり、生活環境とのギャップが大きく調和できていなかったりする時に感じる苦しみなどが考えられます。その場合は、苦しみを軽減させるというより、苦しみと向き合い、行動変容することで苦しみを解消する方向になると思われます。

医療でいうと、対処法的に薬で症状を軽減するというより、病気の原因となった生活習慣を改善させるような考え方です。

正解はよく分かりませんが、少し考え方を変えてみたり、習慣や行動を少し変えて見たり、してみてもよいかもしれません。少しずつ自分にできることで、良くなりそうなことを試してみるとよいかもしれません。

以上。