会社を退職後、自らのアイデンティティについて考えた時期がありました(過去記事:無職期間を振り返る)。ユング心理学に参考になる考え方があったので紹介したいと思います。無職、定年、FIRE等で社会的な肩書をなくした際の参考になるかもしれません。ユング心理学は、放送大学で概略を学び、下記参考文献も図書館で借りて読みました。
《参考文献》
(1)C・G・ユング. 自我と無意識の関係. 野田倬訳. 人文書院, 2017
1.自我と自己
ユングは無意識について深く研究した心理学者でもあります。ユング心理学では、心全体は、意識と無意識から構成されると考えます。また自我(エゴ)と自己(セルフ)という概念があります。自我は意識の中心であり、自己は意識と無意識を含めた心全体の中心を示します。自我はペルソナ(社会的な役割、仮面)を演じて社会に適用しますが、心の奥には、本来の自分自身である自己が存在します。ペルソナは、職業ペルソナ、親ペルソナなど、役割に応じて複数の仮面が存在します。
ユング心理学的に考えると、退職によって失うのは、職業ペルソナという仮面の1つを脱ぎ捨てたに過ぎないと考えることができます。本来の自分である自己や、職業以外のペルソナは失われていません。
しかし、職業ペルソナを自分と同一視してしまうと、退職した後に、自身のアイデンティティが揺らいでしまうと思われます。また長い会社員生活を続けるうちに、職業ペルソナを優先して個人的な本心が後回しになり、本来の自己が何を望むのか分からなくなってしまうこともあるかもしれません。
2.自己発見のプロセス
ユング心理学には、個性化という概念があります。個性化とは、無意識にある心も意識に統合して、本来の自分(自己:セルフ)を実現していく生涯を通した心の発達プロセスといったものです。ユングは個性化を人生の目的とも言っています。
自己を発見するにはどうすればよいでしょうか。やはり色々なことをやってみることで、向き不向きや才能の有無などが分かるものだと思います。過去の経験から、既に発見している自己もあると思います。新しいことにチャレンジすることで、新たな自己発見があるかもしれません。
ユング心理学では、無意識に抑圧した自身の否定的な側面(シャドウ)と向き合うことや、社会的役割になりづらいため意識していない異性的な性質(アニマ/アニムス。男性なら女性的な性質、女性なら男性的な性質)も意識に統合することで、より全体的な人格に成長していくプロセスを提唱しています。
様々なことにチャレンジしたり、自身の内面と向き合うことで、自己発見が進むものと思われます。アイデンティティ(自己同一性)は、過去の自己発見や、今後の自己発見により、連続して保持されると思います。
以上。