人生の期待水準を上げない効果

人生の期待水準を上げ過ぎると、現状への不満が高まり、不幸を感じてしまうことがあります。例えば、SNSなどで幸福な他者を多く見過ぎると、なんとなく当り前の水準を上げてしまい、自分の現状に不満を感じてしまうかもしれません。一方で自分より不幸な状況を見ると、自分はまだましと考える心理もあると思います。

人生や生活の期待水準を上げない効果について考察します。

1.ショーペンハウワーの哲学(ペシミズム)

参考にショーペンハウワーの哲学を取り上げたいと思います。ショーペンハウワーは、19世紀のドイツの哲学者で、ペシミズム(悲観主義・厭世主義)として知られています。

私は、下記参考文献にある「幸福について」という本を何度か繰り返し読みました。私のこの本に対する解釈としては、人生は苦しみに満ちていて、幸福を目指すことは諦めて不幸を減らすことを考えたほうが現実的といったことが書かれています。哲学書というよりは、日常の例を交えながらエッセイ風に書かれて、読みやすい本と思います。やや毒舌チックで皮肉もありますが、嘘がなく腑に落ちる点が多くありました。

確かに、現実的に世の中を俯瞰してみると、幸福の種よりも不幸の種のほうが圧倒的に多いと思います。

幸福の形は概ね共通していると思います。健康、経済的豊かさ、よい人間関係、自己実現など概ね似たりよったりと思います。また、幸福を長続きさせることも難しい面があります。

一方で不幸の形は、病気、貧困、自然災害、人的災害(戦争や内戦等)、悪い人間関係等、多種多様であり、病気だけでも数えきれないほどの多くの病気が存在します。不幸の形は、幾らでも想像できてしまいます。

このような考え方は、一見悲観的で良いことがなさそうですが、大きなメリットもあると思います。それは、人生の期待水準が下がると、小さなことに幸福を感じやすくなることです。また多少の不幸は当り前と考えると、現状への不満も減ります。

例えば、現在の日本の状況を見ると、物価上昇にる経済力低下など暗い話が多いですが、戦争や内戦をしているよりましか、といった見方もできます。

《参考文献》

ショーペンハウアー. 幸福について (光文社古典新訳文庫) . 鈴木芳子訳. 光文社. Kindle 版, 2018

2.老子の言葉(足るを知る)

老子の言葉も参考になると思います。老子は紀元前6世紀頃の中国の思想家です。老子の言葉に、「足るを知る者は富む」という言葉があります。

「満足することを知っている者は、たとえ貧しくとも精神的には豊かで幸福である。欲望にはきりがなく、欲深くならずに分相応のところで満足できる者は、心が富んで豊かである。」といった趣旨になります。

老子の言葉からは、人生や生活の期待水準を上げ過ぎずに、今あるものに目を向けることが大切と思われます。

3.生活水準についての考察

経済的な側面として、生活水準について考察したいと思います。

生活水準については、普段の生活水準はあまり上げずに、時々贅沢するのがよいと私は考えています。主な理由を記載します。

1点目は、普段の生活水準を上げると最初は幸福を感じますが、すぐに慣れてしまい普通の基準が上がってしまうからです。そして普通となった生活水準では幸福感を感じづらくなります。

2点目は、贅沢感は普段の生活水準(ベースライン)とのギャップから生まれると思うからです。例えば、家賃が安めの自宅に住んでいる人が、高級ホテルに泊まると贅沢を感じますが、自宅が豪邸の人はあまり贅沢を感じないかもしれません。

3点目は、時々の贅沢であれば、ベースラインとなる普段の生活水準が上がらないからです。普段と特別な日を分ける考え方です。特別な日の終了によって、慣れる前に普段に戻れます。日本伝統の「ハレとケ」の考え方に近いと思います。経済的満足度と「ハレとケ」の関係については、過去に考察した記事があるので、よろしければご参照ください。リンク先は下記です。

・参考過去記事:経済的満足度と日本伝統文化ハレとケの関係について

4.資本主義社会の構造からの考察

4.1.構造による影響

現代の日本は資本主義社会であり、日本社会で生活していると資本主義の仕組みや構造の影響を受けると思います。気づかないうちに、仕組みに巻き込まれていることもあると思います。資本主義の仕組みは、本質的に資本の増殖であるため、消費と生産を促す構造になっています。消費者に向けては、広告や営業活動で購買意欲を掻き立てます。労働者に向けては、生産性を上げて、より多くを生産することを求めます。そのため資本主義は、足るを知れない構造になっていると思います。詳しくは、下記の過去記事で考察しています。よろしければ、ご参照ください。

・参考過去記事:足るを知らないGDPと足るを知る老子 成熟した資本主義社会に必要なもの

資本主義社会では、知らず知らずのうちに、普通の水準が上げられていると思います。現状に不満げな現代人は、資本主義の構造的な影響もあるかもしれません。

4.2.影響を少なくする対策案

人生や生活の期待水準を上げないために、資本主義の影響を少なくする方法を考察します。

4.2.1.金融リテラシー(余計や物を買わない)

金融リテラシーを高めて余計な物を買わないことが、防御策になると思います。

自分にとって必要なものや投資になるものにはお金を使い、不要なもや浪費になるものは買わないことです。シンプルではありますが、何に価値を置くか、何にお金をかけるかといった自分軸の価値判断が必要になります。また、そういった判断を重ねていくことで、金融リテラシーも高まっていくと思います。

他人が持っているからとか、見栄や地位財的な視点だけでお金を使うと、自分にとって不要なものまで買ってしまうかもしれません。

自分にとって必要なものを整理していくと、不足している物は案外少ないかもしれません。

4.2.2.お金以外の価値観を持つ

資本主義の仕組みでは、お金が大きな力を持っています。お金が全ての価値を決めていると言っても、言い過ぎでないかもしれません。

逆手に取ると、お金以外の価値観を持てば、資本主義の枠組みから1歩距離をおいて物事を見ることができます。その影響を減らせます。

資本主義社会で生活していると、お金にならないことは無駄という思考に陥りがちです。値段が高いものは、価値も高いと考えがちです。しかし、それは資本主義のシステム上のルールであって、人生全般にまで及ぶ普遍的なルールではないと思います。

具体的には、例えば、消費に頼らない活動や、お金があまりかからない趣味などがあります。

散歩や自炊などは、お金はかかりませんが、健康にもよいです。読書もあまりお金がかかりません。図書館で借りれる本であれば無料です。公園では、散歩、ランニング、体操などが無料でできます。

楽器や絵やスポーツ等を自分でするような趣味も、道具の初期費用はかかりますが、トータルでは比較的お金がかからないと思います。生産的な趣味は自給自足的で、概してお金がかからないと思います。他人のサービスや生産物を消費するときに、その対価としてお金がかかるからです。

このように、お金をあまり使わない活動にも着目してみるとよいかもしれません。

以上。

投稿者: おか

住所:埼玉県 性別:男 年代:50代前半 趣味:ウォーキング、旅行、読書 Address: Saitama,Japan Gender: Male Age: Late 50s Hobbies: walking, traveling, reading

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